スペースキャンパーB-COOLはキャンピングカー長野が製作する、ハイエースワイドミドルルーフワゴンをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。
同社はハイエースやタウンエースをベース車にしたバンコンを製作しているが、「スペースキャンパー」は同社のコンプリートモデルの愛称。また「COOL」のネーミングはエアコン標準装備のモデルに付けられている。現在スペースキャンパーCOOLシリーズには「スペースキャンパーCOOL」、「スペースキャンパーCOOLs」とこの「スペースキャンパーB-COOL」がある。
「スペースキャンパーCOOL」はハイエースワイドミドルルーフワゴンをベース車に、また「スペースキャンパーCOOLs」はハイエース標準ボディ標準ルーフをベース車にしたバンコンで、いずれもクーラーが標準装備された、二人旅仕様のレイアウトを持つ。
今回レビューするスペースキャンパーB-COOLは、ハイエースワイドミドルルーフをベース車にするが、4名が前向き乗車できるレイアウトを持つモデル。二人旅仕様の前2車に比べ小さな子供連れのファミリーに適している。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
ハイエースワイドミドルルーフ ワゴンをベース車に使用したバンコンキャンピングカー。小さなポップアップルーフを持つのが特徴(注:エクステリアの項参照)。
2列目に前向き固定のシートを2脚配置し、計4名が前向き乗車できる。後部のベンチシートにも乗車できるので、乗車定員は8名。また、就寝定員は3名で、小さな子供がいるファミリーでのクルマ旅にも対応できる。
後部には両側に横座り対座のベンチシートを配置し、コの字型のダイネットを形成する。コンパクトなギャレーもあり、ポータブル冷蔵庫や電子レンジも標準装備される。
更に一体型のクーラーを標準装備し電装系にはリチウムイオンバッテリーを標準装備する。外部電源入力と充電機能、1500Wインバーター、100Wソーラーシステム(オプションで追加可能)を標準装備し、電装系も充実している。
更にFFヒーターやルーフベンチレーター(マックスファン)も標準装備され、標準装備が充実しているうえ比較的手ごろな価格設定でコストパフォーマンスに優れている。
アピールポイント
・一般的な5x2mのパーキングスペースにも駐車でき日常使用にも便利
・計4名が前向き乗車可能
・ベッド展開しやすいベンチシートのダイネット
・3名が就寝でき、ファミリーでのクルマ旅にも対応
・一体型クーラー、FFヒーター、マックスファンを標準装備
・ポータブル冷蔵庫、電子レンジを標準装備
・リチウムイオンバッテリー標準装備
・1500Wインバーターや外部電源による充電機能も標準装備
・100Wソーラーシステムも標準装備
ベース車とエクステリア
スペースキャンパーB-COOLのエクステリア
ベース車はハイエース ワイドミドルルーフ ワゴンGLで、8ナンバー登録。サイズは4880x1950 mmで一般的な5x2mの駐車スペースに駐車できるので、コインパーキングにも駐車可能だ。
ミニポップアップルーフ
ルーフ上にミニポップアップルーフがあるのが特徴で、これは換気だけでなく、8ナンバー登録のためのギャレー前高さの確保も担っている。ただし、2022年4月のキャンピングカー構造要件の一部規制緩和により、高さ確保のためとしては、このミニポップアップルーフの必要性は無くなった。
右側後部にクーラー用の拡張ボックスを架装するが、通常のハイエースと見た目はほぼ変わらないため、日常用途にも違和感なく使用できる。4名が前向き乗車できるようになったことにより、より日常での使い勝手が良くなった。
インテリア
家具色やシート生地は広い選択肢から選択できる
展示車は上の写真のようなカラーリングのインテリアだったが、家具色やシート生地は広い選択肢から選択できる。
特別高級感があるわけでは無いが、シートや家具は一般的な作りで不満はないだろう。照明はダウンライトを使用し、夜の室内を演出する。
レイアウト
2列目に前向き固定のシートを2脚配置する
2列目に前向き固定のシートを2脚配置する。スペースキャンパーCOOLには後部に前向きシートが無かったが、B-COOLではこれが追加されたため、前向きに4名が乗車できるようになった。
日常使用で3名以上が乗車したり、クルマ旅でたまに子供や孫を乗せる、あるいはベビーシートを固定するといった場合に有用なレイアウトだ。
後部は両側にベンチシートを配置し、横座り対座のダイネットとなっており、ベッド展開も容易に行える。
また、ギャレーキャビネットはエントランスの左側に移動し、スペースキャンパーCOOLに比べるとかなりコンパクトになっている。
ダイネット
横座り対座ダイネット
両側にベンチシートを配置した横座り対座ダイネットだが、後部にもシートがあり、コの字型のシートでテーブルを囲む。4名程度ならゆったりと座れるダイネットだ。
スペースキャンパーのダイネットの特徴は、後部にリクライニングマットを装備していること。このマットは置く方向によって、急角度と緩角度の2通りにセットできる。ベッドモードにしてこのマットを使用すると、寛いだ姿勢でテレビを観ることができる。
ベッド
ベッドサイズは1900x1540mm
シートバックを中央に移動するだけでベッドになる。ベッドサイズは1900x1540mmでスペースキャンパーCOOLと変わらない。マルチモードシートではないので、ベッドメークは極めて楽だ。
身長方向は1900mm確保できているので長身のユーザーも足が窮屈ということは無い。ベッド幅は家庭用のクイーンサイズ(1600mm)に近く、キャンピングカー要件では3名が就寝できるが、現実的には大人2名と小さな子供1名が限界だろう。
ギャレー
シンプルなギャレー
スペースキャンパーB-COOLのギャレーは、スペースキャンパーCOOLのそれに比べると簡易的なものになる。もちろん、前向きシートが追加された上にギャレーを設けているので、これは仕方のないことではある。
シンクは跳ね上げてセットする。本来ならシンクをキャビネット上に設置したいところだが、電子レンジがあるので苦肉の策となっているようだ。
シンクの下の各10Lの給排水タンク
シャワーフォーセットはシンクの下に設置されており、使用する場合は上部に移動する。またシンクの下には各10Lの給排水タンクが収納されており、車外から直接出し入れできる。
冷蔵庫/電子レンジ
85L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は15Lのポータブルタイプが標準装備される。設置場所は上の写真のように2列目シートの前。ここ以外に適当な設置場所が見つからないのかもしれないが、窓側の座席は足が下せくなるのは残念なところ。また12V電源が用意されているのかも不明だ。
電子レンジも標準装備される
電子レンジは家庭用100V仕様のものが標準装備され、ギャレーキャビネットに収納される。クルマ旅でちょっとした調理をする場合、大変便利だ。なお1500Wインバーターも標準装備されているので、外部電源が取れないところでもサブバッテリーで駆動することができる。
多目的ルーム
スペースキャンパーB-COOLには多目的ルームは無いが、緊急用にポータブルトイレを積んでおくことはできる。最後部のシート下に入る高さのポータブルトイレを収納しておくと目に触れることは無い。
収納
ベンチシート下の収納スペース
ベース車がミドルルーフなのでオーバーヘッド収納は期待できないが、ベンチシートがあるので、シート下が大きな収納スペースになる。
シートバック裏のポケット収納
またベンチシートのシートバックを外すと、ポケット収納が用意されている。小物を収納しておくのに便利だ。
ベッド下の収納スペース
更に、ベッド下は大きな収納スペースとして利用できる。ベンチシート下の収納には、リアゲートを開けて車外後部からアクセスすることもできる。左側のベンチシート下には釣り竿などの長物を入れるのに便利だ。
空調
一体型クーラーを標準装備
スペースキャンパーB-COOLの最大の特徴が、一体型クーラーが標準装備されること。ハイエースミドルルーフでクーラーが設置できるモデルはまだまだ少ないので、これはスペースキャンパーCOOLシリーズの大きなアドバンテージだ。
クーラー使用時は扉を開ける必要がある
クーラーは一体型で、車体右側にはクーラーを収めるための拡張ボックスが架装される。クーラーの排熱はこの拡張ボックスに付けられた扉を開ける必要があり、クーラーを使用する前に車外に出る必要がある。
これは雨の日は多少億劫だ。また走り出す前に扉を閉めることを忘れないようにする必要がある。しかし、扉で密閉しないと風雨などで故障の原因になるのかもしれない。
なお、暖房用にFFヒーターが標準装備されるほか、ルーフベンチレーター(マックスファン)も標準装備される。
テレビ/ナビ
フリップダウンモニターを標準装備
15.6型フリップダウンモニターが標準装備される。また、ナビは10型フルセグナビやナビ連動前後撮影ドライブレコーダーが標準装備される。更にバックモニターカメラも標準装備される。
電装系
リチウムイオンバッテリーを標準装備
容量が記載されていないので不明だが、リチウムイオンバッテリーが標準装備される。(写真では2個搭載されているのが分かるので、計200Ahと思われる)これにより、クーラーを実用的に使用することができる。クーラーは100V仕様だが、先述の通り1500W正弦波インバーターも標準装備されているので、もちろんバッテリーでの運転ができる。
100Wソーラーシステムを標準装備
さらに100Wソーラーシステムが標準装備される。またオプションでもう1枚100Wのパネルを追加することができ、電装系は強力なものになる。
価格(2022年1月現在:千円台切り上げ:税込)
同社のホームページに価格情報が無いので、2022年1月時点の価格になるが、ワゴンGL 2WD/6ATで647万円~、4WD/6ATで678万円~となっている。なお、スペースキャンパーCOOLも同価格。
付けておきたい必需オプションは標準装備が充実しているため、特に無い。予算に余裕があれば、ソーラーパネルを追加(55,000円)で装備しておくと、更に強力な電装系になる。
他モデル
ハイエースワイドミドルルーフをベース車にするバンコンモデルは多数存在するが、クーラーを搭載でき、ファミリーでクルマ旅ができるモデルはOMCの北斗対座モデル(638万円~)とタコスのハイエース3B(550万円~)くらいしかない。
なお、これらはエアコンとリチウムイオンバッテリーなどはオプションで、70~100万円の追加になる。また、FFヒーターやソーラーシステムもオプションになっている。
この中にあってスペースキャンパーB-COOLは、前向き4名乗車できるが、ベンチシートダイネットのためベッド展開が楽というメリットがある。ただし北斗対座モデルは常設ベッドを持つため、ベッド展開に関しては有利だ。
まとめ
スペースキャンパーB-COOLは、小さな子供を乗せて車中泊する、というユーザーに適している。就寝人数が3名と言っても、現実的には大人3名が就寝するには狭く、せいぜい大人2名と、小学生1名程度が限界だ。
最初から二人でしか使わない、ということならスペースキャンパーCOOL、あるいはスペースキャンパーCOOLsの方をお勧めする。これらの方が、レイアウトに無理が無いからだ。
しかしスペースキャンパーB-COOLは標準装備が充実しているのが特徴で、小さな子供連れのファミリーがハイエースワイドミドルルーフで快適なクルマ旅を望む場合は有力な選択肢となる。
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