SOLIS(ソリス)59Pは米国のウィネベーゴ(Winnebago)が製作する、クライスラー ラムプロマスターをベース車にした輸入バンコンキャンピングカー。日本へはニートRVが輸入している。
ウィネベーゴは世界的に有名な米国のビルダーで、超大型モデルから今回取り上げたソリスのようなバンコン(キャンパーバン)まで多くのモデルをラインアップしている。
同社のバンコンは、メルセデスのスプリンターとラム プロマスターの2種類のベース車が使われており、ソリスはラム プロマスターをベースにしたモデルのひとつ。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
ハイエーススーパーロングよりもはるかに大きい5980mmのボディにポップアップルーフを装備したファミリー向けバンコン。海外モデルらしく、シャワーやカセットトイレ、常設コンロを持つギャレーなど、フル装備のバンコンとなっている。
輸入モデルに多いラグジュアリー志向ではなく、アウトドアを志向した造りで、フロアは土足でも対応でき、汚れにも強い樹脂を使用している。
エクステリア
ポップアップルーフを架装する
ベース車はラム プロマスターカーゴバン。V6 3.6Lガソリンエンジンを積む。このボディにポップアップルーフを架装しており、ファミリー使用に対応している。
なお、外観はマイナーチェンジ前のフィアットデュカトだが、北米ではこのデザインが現行車で、内容的にもエンジンをはじめ全く別のクルマとなっている。(デュカトは全てディーゼル)ラムはクライスラーの商用車部門。
インテリア
ナチュラルなインテリア
ウィネベーゴのフルコンモデルのようなアメリカンなインテリアではなく、むしろ欧州車のようなナチュラルなインテリアだが、洗練された室内になっている。
多くの輸入モーターホームと異なるのは、床が樹脂製なこと。おそらく靴のまま車内を歩くことを想定し、床は丈夫で汚れに強い素材を採用している。
シートや家具色の選択肢はなく、この組み合わせのみとなっている。
レイアウト
基本的には欧州の多くのバンコンと同じく、前部に対座ダイネットと後部にベッドルームが配置される。また、中央にギャレーとサニタリールームが配置されている。
ダブルベッドは跳ね上げることができる
後部常設ダブルベッドは跳ね上げることができ、自転車などの大きな荷物を積むことができる。面白いのはベッドの裏側にテーブルが収納されており、ベッドを跳ね上げた状態でテーブルをセットできる。
このテーブルは調理台として、あるいは立ち仕事用に使うことを想定しているが、大きなアメリカ人でなくてもテーブルの隙間を通り抜けて向こう側に行くのは難しそうだ。
ダイネット
運転席と助手席が回転して後ろ向きになる
運転席と助手席が回転して後ろ向きになり、2列目シートと対座ダイネットを形成し、4名がテーブルを囲める。ルーフベッドに上がるための梯子を設置しなければならないので、テーブルは1本足で支えるタイプになっており、あまり大きくない。
2列目シートには3点式シートベルトが備わっており、計4名が前向きに乗車できる。
ベッド
後部の常設ダブルベッド
ベッドは後部常設ダブルベッドとルーフベッドがあり、計4名が就寝できる。後部常設ダブルベッドは1950x1490mm大きさ。家庭用ではダブルベッドとクイーンベッドの中間の幅に相当する。
また、リア常設ベッドにはウッドスプリングが組み込まれており、上質な寝心地が期待できる。
ポップアップルーフを上げたルーフベッド
もう一つのベッドはルーフベッドで、ポップアップルーフを上げた状態で使用できる。大きさは2000x1320mmで家庭用ではセミダブルとダブルベッドの中間の幅に相当する。
FROLIスリープシステム
ルーフベッドにはフローリー社のスプリング方式FROLIスリープシステムが使用されており、ルーフベッドと言えども寝心地には手を抜いていない。
ポップアップルーフのサイドテント地にはジッパー式のウインドウがあり、開けるとバグネットになり風通しも良くなる。ただし特にキルティング材などで防寒されているわけではなく、FFヒーターの吹き出し口も無いので冬場は寒そうだ。
ルーフベッドへの開口部
なお、ルーフベッドへの上り口は一部が開口しているだけで、日本のポップアップルーフのように全体に開口していない。従って、開放感はそれほど感じられないが、もとより高い天井高なので、圧迫感は全くない。
以前紹介したハイマーのフリー540もそうだったが、欧州車も北米車も、ポップアップルーフは天井を高くして開放感を得るものではなく、単にベッドスペースを追加するものと考えられているようだ。
この方式のメリットは、オーバーヘッド収納が設置できること。開口部以外はポップアップルーフ非装着の場合と同じようにルーフが存在するので、オーバーヘッド収納がノンポップアップルーフ車と同様に設置できる。
ギャレー
常設2口コンロがあるギャレーセクション
欧州モデルや北米モデルは長期滞在型の使用が一般的で、従ってバンコンでも常設コンロとシンクは普通に装備されている。ソリスも同様で、大きな常設2口コンロとシンクが設置されている。
調理スペースも広く、更にコンロの下に引き出し式の調理台もあるので、手の込んだ料理も可能だ。
ギャレーコンソールの収納
ギャレーコンソールには引き出し収納と観音開きの収納が用意されており、食器や調理用具を収納しておける。またギャレー上部にはオーバーヘッド収納があり、ここにも調理用をなどを収納できる。
なお、給排水タンクは各75Lで、固定タンクとなっている。また、ガスは国産モデルのようにカセットガスではなく、8KgのLPガスボンベが積まれる。ガスコンロやトルマコンビボイラー/ヒーターはこのLPガスを使う。
冷蔵庫/電子レンジ
85L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は85L横開き式が標準装備される。冷蔵庫はギャレーコンソールのエントランス面に設置されているため、車外からでも簡単にアクセスできる。
なお展示車には電子レンジは装備されていなかった。またニートRVのサイトにも記載されていないので、オプション設定されていないのかもしれない。しかしこのクラスでは電子レンジは必需品に近いので、どのように設置されるのか知りたいところだ。
サニタリールーム
サニタリールームが標準装備される
カセットトイレと温水シャワーが装備されたサニタリールームが標準装備される。ボイラーはトルマコンビ Ecoシステムで10Lの湯を沸かし、水と混合して適温にする。
完全に防水処理されているが、欧州車のサニタリールームと比べて無機質な感じだ。FFヒーターの吹き出し口があるので冬場は暖かい。なお、手洗いは無く、室内の収納も小さい。この辺りは欧州車に比べて見劣りがする。
車外でもシャワーが使える
なおシャワーは車外でも使えるよう、リアとエントランスにも蛇口が設けられている。リアゲートに竿を渡して目隠しにできるので、車外でシャワーを使うこともできる。これはWash
Stationと書かれており、モノを洗うのが目的のようだ。
収納
ベッドルームのオーバーヘッド収納
先述の通り、ポップアップルーフがあるがオーバーヘッド収納は豊富に用意されており、ダイネット上、ギャレー上、ベッドルーム両側に設置されている。奥行きも深く収納力は大きい。
ベッド下の家具の収納
ギャレーの収納には既にふれたが、その他にも後部ダブルベッド下両側に収納家具がある。左側の収納家具には引き出し収納と観音開きの収納が用意されている。右側の家具にもポケット式の収納がある。
後部の床下収納
最後部には床下収納も用意されている。ただし深さはあまり無いので収納するものは限られる。
空調
暖房はトルマコンビがヒーターとしても使用できるが、ディーラーオプションでガソリンのFFヒーターが設置できる。
冷房に関しては、残念ながらオプション設定されていない。欧州車でもキャブコンは家庭用エアコンがオプション設定されるようになったが、バンコンでは設置できるモデルは少ない。国産バンコンではスーパーロングを中心に設置できるモデルが増えているので、輸入バンコンも早く対応されることを期待したい。
テレビ/ナビ
テレビは地デジ9V型テレビ(運転席用)がオプション設定されている。ナビはSDナビがオプション設定されているが、希望のものが付けられると思われる。
電装系
容量不明だがディープサイクルバッテリーが2個標準装備される。また外部電源入力と充電機能も標準装備される。インバーターはオプション。220Wソーラーシステムもオプションで取り付けられる。
価格(2021年8月現在:千円台切り上げ:税込)
ソリス59Pは1408万円~。ほとんどの必需品は標準装備されているので、付けておきたいオプションは、ナビ関連くらいだ。
なおオプションリストに無いが、家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーのオプションは欲しいところだ。また、電子レンジを希望するユーザーも多いだろう。
他モデル
輸入モデルのポップアップルーフ仕様は、ハイマーのFREE(フリー)540(1136万円~)と602(1162万円~)がある(ただし現在完売済)。また、ポップアップルーフではないが4名が就寝できる輸入バンコンならサンライトのCFLIFF(クリフ)601がある。
更にアドリアでは、やはりポップアップルーフではないが、Twin Supreme 640 SPB FAMILY、Twin Plus 600 SPB FAMILYの2モデルがある。
ツインは後部にダブルベッドが2段になっており4名が就寝できる。また輸入バンコンながら家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーがオプション設定されている。クリフはリチウムイオンバッテリーを搭載できるが家庭用エアコンはオプション設定されていない。
ただしソリスはこれらの欧州モデルがラグジュアリー志向なのに対し、アウトドア志向のモデルだ。その意味ではあまり比較する意味は無いかもしれない。
まとめ
ソリスは数少ない北米からの輸入モデルだが、欧州車を思わせるようなインテリアでもあり、一目で北米モデルと分かるようなインテリアを期待していると少し戸惑うかもしれない。
しかし、ラグジュアリー志向の輸入モデルの中にあって、アウトドア志向を打ち出したソリスは目新しく新鮮であり、輸入モデルでは他に類を見ない。国産車なら、サイズは全く異なるが、アネックスのRIWシリーズと似たコンセプトのように思える。
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