リコルソ acモデルはアネックスが2022年のジャパンキャンピングカーショーで発表した、ハイエースワイドミドルワゴンGLをベース車にしたバンコンキャンピングカー。
同社はカムロードベースのキャブコン「リバティ52DB」や「リバティ52SP」といったフルサイズキャブコンからハイエースやNV200バネットベースのバンコンまでラインアップしている。
リコルソは主に二人旅をイメージしたバンコンで、お洒落なインテリアが特徴のモデル。今回、これに一体型エアコンオプションが設定され、より快適なクルマ旅が実現した。
acモデルはこのほか、Wiz(ウィズ)にも設置され、こちらはハイエース標準ボディハイルーフを使用する一回りコンパクトなバンコンとなっており、もう一つの二人旅用の選択肢となっている。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
コンセプト
リコルソはハイエースワイドミドルワゴンを使用したバンコンで、5x2mの標準的な駐車枠に駐車できる最大サイズ。機動性と車内の広さを併せ持つ。
二人旅を想定したレイアウトを持ち、同社らしく洗練されたインテリアが特徴。ギャレー、冷蔵庫を標準装備し、電子レンジもオプションで装備できるため、長期のクルマ旅にも対応できる。
今回エアコンが選択できるようになったことで、夏場の旅でも快適に過ごすことができるようになった。また、リチウムイオンバッテリーも選択できるので、実用的にエアコンを使うことができる。
アピールポイント
・一般の駐車枠に駐車できるハイエース最大のボディサイズ
・ワゴンGLが標準グレードで、商用車を感じさせない運転席周り
・選択できる洗練されたインテリア
・二人旅に特化した広いレイアウト
・運転席、助手席から車外に出なくても後部へ移動できるウォークスルー
・多段階にセットできるリクライニング機構
・ちゃぶ台スタイルで寛げるダイネット
・ツインベッドでもダブルベッドでも使えるベッド
・エアコン選択可能
・リチウムイオンバッテリー選択可能
エクステリア
リコルソ acモデルのエクステリア
ベース車はハイエースワイドミドルワゴンGL。ワゴンGLなので、運転席周りの質感は高い。5x2mの標準的な駐車枠に収まり、また高さも高さ制限のある駐車場に入れる可能性もある。(ただしギリギリの場合があるので注意が必要)
基本的にボディ外観への架装は無く、見た目は通常のハイエースと変わらない。アルファードの車幅(1850mm)とほぼ同じ(1880mm)で、特別に大きいわけではないため、運転は特に難しくはない。
なお断熱加工はオプションとなっている。これは、広いガラス面からの熱移動の影響が大きいため、断熱加工の効果が最大限に発揮できないため。もちろん断熱加工すれば、例えばルーフからの熱伝導などを減少させる効果はある。
インテリア
洗練されたお洒落なインテリア(エアコン搭載車)
リコルソは洗練されたお洒落なインテリアが特徴のひとつだが、展示車も上の写真のように明るい室内になっていた。なお、ダークインテリアも選択することができる。
ダークインテリアも選択できる(エアコン非搭載車)
レイアウト
前部にエアコンを収納するキャビネット、後部は左右両側にベンチシートを配置した広いダイネットのレイアウト。最後部にはミニギャレーを配置する。
乗車人数は、ベンチシートに各3名が乗車できるので、運転席、助手席を含めて計8名となっている。ただし、前向き乗車は2名なので、クルマ旅の場合は二人旅を想定している。なお、ベッドの規定就寝人数は3名となっている。
運転席、助手席から後部へは楽に移動できる
後部が広いダイネットになっているこのレイアウトは室内が広く見えるため、クルマ旅でも開放感がありストレスが溜まり難い。また、動線も前後に通っており、運転席、助手席から後部への移動も、もちろん車外に出ることなく可能だ。
ダイネット
多段階にリクライニングできるダイネットシート
後部は両側にベンチシートがあり、テーブルを挟んだ横座り対座の広いダイネットになっている。リコルソのダイネットで特筆できるのは、最後部のベッドマットが多段階にリクライニングできること。
二人が足を投げ出してリクライニングシートで寛ぐことができ、更に中央の通路をベッドマットで埋めてベッドモードにすると、ちゃぶ台スタイルで寛ぐこともできる。ダイネットでどのように寛ぐかまでも考えられているキャンピングカーは多くない。
ベッド
クイーンサイズに相当するフルベッドモード
両側のベンチシートは、そのままツインベッド(二床のシングルベッド)になる。ベッド幅が十分ではない場合は、通路部分をシートバックで埋めてフルベッドモードにすることもできる。
その場合のベッドサイズは1800x1660mm。家庭用ならクイーンサイズ以上の幅があるので、二人ならゆったり就寝できる。キャンピングカー要件では3名が就寝できることになる。
ギャレー
最後部に配置されているギャレー
ギャレーは最後部に配置されている。ハイエースワイドミドルワゴンベースのモデルでは、8ナンバー取得のためだけの目的で、実用性のないシンクを付けているモデルもあるが、リコルソでは実用性が考慮されている。
シンク上のミラー付き収納
十分な大きさのシンクとは言えないが中皿程度までは洗えるし、洗面もできる。またシンクの上には収納があるが、蓋を開けるとミラーが付いており、実用性が想定されていることが分かる。
給排水タンクは各10Lで、リアゲートを開けて車外から直接出し入れできる。これもギャレーの実用性を考えた結果だ。なお、オプションでシャワーヘッドに交換できる。
冷蔵庫/電子レンジ
30L引き出し式冷蔵庫が標準装備される
リコルソ acモデルでは、冷蔵庫は30L引き出し式のものがエントランス横に標準でビルトインされている。この冷蔵庫は冷蔵のみで冷凍はできない。
なおリコルソのエアコン非搭載モデルでは49L横開き式の冷蔵庫が標準装備されており、エアコンモデルでは冷蔵庫の位置にエアコンが入ったため、冷蔵庫の変更を強いられた形だ。
冷凍庫が必要な場合は、別途、冷凍機能が付いたポータブル冷蔵庫を持ち込むと良いだろう。
電子レンジがオプションで設置できる(写真はエアコン非搭載車)
電子レンジは家庭用の100Vのものがオプションで設置できる。上の写真はエアコン非搭載車に電子レンジを設置した例。なお電子レンジをサブバッテリーで駆動するためには、オプションの1500Wインバーターを選択する必要がある。
多目的ルーム
リコルソには多目的ルームは無いが、ポータブルトイレを積んでおくことはできる。ただしリコルソは大人が2名で使うことが想定されるクルマなので、使えるシチュエーションはあまりないかもしれない。
収納
エアコン横の収納
リコルソはもともと収納が豊富なモデルだが、エアコンを搭載したことにより、特に前部キャビネットの収納の多くが無くなってしまった。ギャレーキャビネットの収納としては、エアコンの左隣に3段の細い収納が設置されている。
ただし、エアコンは着脱できるようなので、シーズンオフにエアコンを取り外すと、そこが収納スペースとして使えるだろう。
エントランス横のスイング式の収納
また、エントランス横にはスイング式の収納が用意されている。シューズボックスとして使用しても良いし、一般的な収納として使用しても良いだろう。
エアコン上部の収納
エアコンの上部には扉無しの収納スペースも用意されている。扉は無いが深さがあるので走行中にモノが落ちてくることは少ないだろう。
最後部のギャレー下は大きな収納スペース
最後部のギャレーの下は大きな収納スペースになっており、多少大きなものも積むことができる。リアゲートを開けて車外からの積み下ろしに便利だ。
最後部の床にはFRP製の床下収納を設置
最後部の床にはFRP製の床下収納が設置されている。これは8ナンバー取得のためにギャレー前に1600mmの高さを確保するためのものではあるが、収納としても使える。(上の写真ではスペアタイヤが収納されている)
更に、ギャレーの上部にも収納スペースが設けられている(写真はギャレーの項参照)。
空調
家庭用一体型エアコンがオプション設定されている
暖房はFFヒーターが標準装備されている。多くのモデルではFFヒーターはオプションだが、ほぼ必需装備なのでリコルソでは標準装備となっている。
「リコルソ acモデル」はそのようなモデル設定があるわけではなく、エアコンはオプション(143,000円)で用意されている。このオプションには家具の変更や冷蔵庫の変更が含まれている。ただし、オプションの外部電源入力(30A)あるいは1500Wインバーターを装備する必要がある。
外部電源入力を装備すると外部100V電源があるところでエアコンを使え、インバーターを装備するとサブバッテリーで駆動できる。両方装備すると、どのような場合でもエアコンを使用することができる。
エアコンは一体型の家庭用ポータブルエアコンで冷房専用機。温風や除湿した水はクルマの床下に排出される。ポータブルエアコンと言えども家庭用なので冷房能力は十分ある。ただしそれなりに消費電力が大きいので、サブバッテリーで駆動する場合はリチウムイオンバッテリー(オプション)をお勧めする。
なおベンチレーター(マックスファン)はオプションで取り付けできる。ただし取り付けた場合は全高が高くなり、高さ制限のある駐車場に入れなくなる可能性が高くなる。
テレビ/ナビ
テレビは特にオプション設定されていないが、必要に応じて付けることは可能だろう。ナビも特にオプション設定されていないが、希望のものを取り付けることができる。
電装系
標準では80AhのAGMサブバッテリー2個が装備される(写真はリコルソFalster)
サブバッテリーは80AhのAGMバッテリーが2個標準装備される。またオプションで200Ah(100Ah x2個)のリチウムイオンバッテリーに交換できる。(231,000円)
AGMバッテリーは高性能なので、エアコン非搭載車ならこれで問題ないが、大電力を必要とするエアコンを実用的に駆動するにはやはりリチウムイオンバッテリーがお勧めだ。エアコン駆動時間はリチウムイオンバッテリーで「約3時間〜5時間(周辺環境により変わります)」とされている。
また外部100V電源入力と充電機能はオプション、インバーターは1500Wと400Wのものがオプションで選択できる。またソーラーシステムは230Wのものがオプション設定されている。
価格(2022年3月現在:千円台切り上げ:税込)
ガソリン2WD/6ATで523万円~、4WDでは554万円~となっている。(どちらも暫定価)なおディーゼルの設定は無い。ただしこれはエアコン非搭載の価格で、エアコンオプションは143,000円の追加となる。
エアコン搭載モデルとして付けておきたいオプションは、外部電源入力と充電機能(66,000円)、1500W正弦波インバーター(165,000円:外部電源自動切り替え回路付き)が挙げられる。またできればリチウムイオンバッテリー(231,000円)と230Wソーラーシステム(198,000円)も装備しておきたい。
またクルマ旅に使うのであれば、電子レンジ(55,000円)もあれば便利だ。車内で調理をするなら、ベンチレーター(99,000円)も付けておきたい。(ナビ関連は除く)
他モデル
ハイエースワイドミドルワゴンを使用した8ナンバーモデルは数多く存在するが、エアコンを搭載できるモデルは非常に少ない。二人旅に向きモデルとしては、OMCの北斗対座モデル(564万円~:バンSGL)、キャンピングカー長野の「スペースキャンパーCOOL」(価格不明)が挙げられる。
まとめ
ハイエースワイドミドルワゴンをベース車にするモデルはマルチモードシートを搭載するモデルが多い。これは日常用途にもミニバンのように使用できるようにしているため。
しかしリコルソはマルチモードシートは持たず、前向き乗車は2名に限られている(乗車定員は8名)。そのため前後の動線が通り、広々とした室内が魅力だ。特にクルマ旅で車内で長時間過ごす場合、これはストレスにならない重要なポイントだ。
更にリコルソは洗練されたお洒落なインテリアが特徴で、今回エアコンが選択できるようになり、夏場でも快適に室内で過ごせるようになった。
リコルソ acモデルはかなり完成度の高いクルマだが、短所として引き出し式冷蔵庫が挙げられる。クルマ旅では車内で冷凍食品を電子レンジで温めることもあり、また製氷したい場合もある。やはり冷凍機能のある冷蔵庫が欲しいところだ。対策としては、先に書いた通り、ポータブル冷蔵庫を持ち込むと良いだろう。
二人旅仕様のモデルを選択する場合、Wiz(ウィズ)(540万円~:2WD)かリコルソかで迷うことがあるかもしれない。もちろんリコルソの方が車体も大きくエンジンの排気量も大きい。しかし、価格はリコルソの方が多少安価だ。
全体的な広さや車の動力性能を求めるならリコルソが優位だ。しかしクルマ旅が主な目的で調理もするなら、ギャレーが充実しているウィズの方が向いているかもしれない。リコルソは比較的短期のクルマ旅で、食事は外食がメインのユーザーに向くモデルのような気がする。
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