ファイブスターはレクビィが製作する、ハイエーススーパーロングをベース車に使用した、バン・コンバージョン キャンピングカー。
同社はバンコン専門ビルダーで、ハイエースベースのバンコンを中心にラインアップしているが、フラグシップのシャングリラに見られるように、洗練されたインテリアに定評がある。
ファイブスターのコンセプトは、同社の、やはり縦置き2段ベッドを持つカントリークラブが、二人での長期旅を視野に入れているのに対し、ファミリーでの長期旅。別に長期旅をしなければならないわけではないが、長期旅にも十分対応できるということだ。
縦置き2段ベッドを持つ室内
エクステリアは、特に架装は無く、ノーマルのハイエーススーパーロングと同じ。横置きハイマウントダブルベッドを持つレイアウトならエクステンションボックスが必要になるが、こちらは縦置きベッドなので車幅の不足を補う必要はない。なお、スーパーハイルーフを使用したHi-King仕様も選択できる。
インテリアは、同社の他のモデルと同様に洗練されたもので、質感も高い。家具のエッジの処理なども美しく、悪い意味での手作り感は皆無だ。
レイアウトは、前部にダイネット、後部右側に2段ベッド、中央左サイドにギャレー、最後部にシャワールームの位置取りがされている。2列目に横に長いマルチモードシートを配置しているが、ワイドボディということもあり、前後の動線は確保されている。ギャレー前のスペースも確保されており、料理を作る場合も無理な姿勢になることはない。また、最後部のシャワールームにトイレを置くとしても、ダイネットから離れており、気にする必要はない。バンコンながら、ファミリーで使っても窮屈感が少ないレイアウトと言える。
運転席、助手席を利用した後ろ向きシートで対座ダイネットを作る
ダイネットの特徴は、運転席、助手席のシートバックを前に倒し、後ろ向きのシートとして使っていること。運転席、助手席は、通常ダイネットモードの時は無駄なスペースとなってしまうが、ここも有効に使おうというのがこの考え方だ。デュカトを使用した輸入モデルに見られるようにシートを回転させる方法もあるが、狭い日本車では回転自体が大変なのも事実。しかしシートバックを前に倒すなら、はるかに簡単にできる。運転席、助手席をダイネットに使うのは、後部に縦置き2段ベッドを置くための有用な手段でもある。
上段ベッドがシートバックにもなる2段ベッド
ベッドは、後部の縦置き2段ベッドの他、2列目シートをフラットにしてここもベッドにすることができる。ただし、このベッドは身長方向が1650mmしかないのでキャンピングカー要件を満たさず、子供用の位置付けになっている。しかし幅は1400mmあるので、子供3名が余裕で就寝できる。
一方2段ベッドは1830mmの長さで、下段は800mm、上段は700mmの幅を持つ。どちらも家庭用シングルサイズのベッドに及ばないが、キャンピングカーのシングルベッドとしては平均的な幅だ。
なお、上段ベッドのロックを外すと、下段ベッドのシートバックになる。下段ベッドは3名着座でき、シートベルトがあるので移動もできるが、長距離には向いていない。ベッドは常設ベッドとして使い、寝具などもそのままにしておくのが実際的な使い方だろう。
シンクが埋め込まれたギャレー
ギャレーは、曲線を生かした美しい造形で、丸形のシンクが埋め込まれている。ただ、デザイン優先になっており、跳ね上げ式の調理台は用意されていない。そのため、カセットガスコンロを置くと、調理スペースはほとんどなくなってしまう。下には各19Lの給排水タンクが収納されているが、オプションで排水タンクを床下設置にできる。
横には49Lの冷蔵庫をビルトインした収納ラックが立っており、オプションの電子レンジのスペースも用意されている。上部にも収納スペースが用意されているので、食器などは収納できるが、箸やスプーンを入れておくカトラリー引き出し収納が欲しいところだ。
防水処理されたユーティリティールーム
ユーティリティールームはこのモデルの特徴のひとつで、独自のFRP加工の完全防水ルームになっている。ただしシャングリラのように温水が60L使えるわけではなく、19Lの給水タンクの水が使えるということ。即ち、海水浴の後の水シャワーや、ペットの足を洗うといった使い方が想定されている。もちろん、トイレルームとして使うのも可能だし、濡れたものを一時的に置いておくこともできる。もっともその程度の使い方なら、この防水ルームは少しオーバースペックかもしれない。
収納はダイネット上のオーバーヘッド収納や、前出のギャレー上のオーバーヘッド収納が用意されているので、衣類やタオル、食器類はここに収納できる。大きめのバッグなどは下段ベッド下の収納スペースに収納できるが、あまり背の高いものは難しい。最後部のシャワールームを使わないなら、ここに大きな荷物を積むことができる。
なお、上段ベッド上に長いオープンラック(収納できる棚)が用意されている。これは、上段ベッドで就寝時、ヘッドクリアランスを確保するため、折りたためるようになっている。昼間はこの棚をセットしてここに寝具などを載せておくと、上下段ベッドをソファとして使う場合、寝具が邪魔にならない。
空調はFFヒーターが「標準」仕様にはオプションで、「Superior」仕様には標準で装備される。またベンチレーターが標準装備される。なお、オプション(A/C仕様)で家庭用エアコンが装備できる。
電装系は、115Ahのサブバッテリーが、「標準」仕様では1個、「Superior」仕様では2個標準装備される。また、走行充電はもちろん、外部入力とそれによる充電機能はどちらの仕様も標準装備される。
更に、「Superior」仕様には1500Wの正弦波インバーターと215Wのソーラーシステムも標準装備される。
価格は「標準」仕様が512万円(2WD/6AT:税別)、「Superior」仕様が602万円(同)。縦置き2段ベッドを持つハイエーススーパーロングモデルは、約20モデルほどあるが、価格的には400万円台半ば~500万円後半といったところなので、この中では高価な方に入る。しかし、インテリアの上質感や作りの良さを考えると、価格に見合ったものだろう。特に完全防水のシャワールームは他のモデルにはあまりない設備だ。
また、縦置き2段ベッドとファミリーで対座できるダイネット、それにユーティリティールームを併せ持つ持つバンコンは、実は非常に少なく、他にはロータスRV販売の「E-Lize」やハイエーススーパーハイルーフをベース車にしたキャンパーアシストの「リチ」しかない。レクビィの「カントリークラブ」やオーエムシーの「銀河」も似たレイアウトを持つが、これらは二人旅がコンセプトだ。また、横置き2段ベッド+4名対座ダイネット+ユーティリティールームを持つモデルならトイファクトリーの「GT」やMYSミスティックの「ウインピュアシェルラ」がある。