デリカD:5 D POPは西尾張三菱自動車販売が製作する、デリカD:5をベース車にした、ミニバンベースのキャンピングカー。
同社は社名の通り、愛知県一宮市を本拠とする、三菱自動車の販売店だが、三菱のミニバンをベース車にしたキャンピングカーも製作している。これらのモデルは同社オリジナルモデルなので、他の三菱自動車の販売店では取り扱っていない。
同社は、デリカD:5の他にも、アウトランダーPHEVをベース車にポップアップルーフを架装した「アウトランダーPHEV E:POP」も製作・販売している。
(記事中の価格は全て税込です。また装備や仕様に関してはビルダーでカスタマイズ可能な場合もありますので、各ビルダーにお問い合わせください。)
概要
デリカD:5をベースにオリジナルのポップアップルーフを架装している。またオプションでベッドキットも用意しており、ポップアップルーフと合わせて4名が就寝できる。
乗用車をベース車にすることにより、商用車ベースでは望めない質感やドライビングフィールを得ることができ、日常用途とキャンピングカー用途両方に使用できる。
電装系はオプションになるが設置可能で、FFヒーターや停泊時に使用できるクーラーもオプションで用意されている。
アピールポイント
・商用車にはない高い質感とドライビングフィール
・ポップアップルーフを標準装備
・4名が就寝でき、ファミリーでの車中泊が可能
・FFヒーターや車載用クーラーを設置できる(OP)
・リチウムイオンバッテリーも搭載可能(OP)
ベース車とエクステリア

フルオープンにできるポップアップルーフ
ベース車は三菱デリカD:5で各グレードが選択できる。これに西尾張三菱自動車販売オリジナルのポップアップルーフを架装している。ポップアップルーフはシェード、バグネット、フルオープンの各モードにできる。

ルーフを下げると通常のミニバンと変わらない
ポップアップルーフを架装することにより、ルーフを下げたときの全高が130mm高くなるが違和感は全くない。一般的な駐車場はもちろん、コインパーキングなどにも問題なく駐車できる。
なお、断熱処理は無く、オプションでも設定されていない。エクステリアのアクセサリーは純正品が多数ラインアップされている。
インテリア

デリカD:5 D POPのインテリア
インテリアはオリジナルのデリカD:5のものをそのまま使用している。シート地は本革も含め選択肢がある。
レイアウト
標準ではデリカD:5にポップアップルーフが架装されただけなので、レイアウト的にはオリジナルのデリカD:5と変わらない。デリカD:5は2列目シートが2脚のキャプテンシートか3名掛けのベンチシートが選択できるため、トータルで7名か8名の乗車が可能。
このままで2列目と3列目のシートをフラットにすると車中泊モードになるが、完全なフラットなベッドではないため、寝心地は良くない。
そこでオプションのベッドキットが用意されており、これを装備すると2名が就寝できるフラットベッドになる。ルーフベッドと合わせて4名が就寝できる。
ダイネット

運転席と助手席が反転して後ろ向きになるダイネット
オプションだが、運転席と助手席が反転して後ろ向きになる。これにより、2列目シートと向かい合うダイネットが形成される。また、テーブルもオプションで用意されているので、食事やコーヒータイムに便利だ。
シートの回転はそれほど難しくはないが、やはり車外から操作することになるので、雨が降っていたりすると面倒ではある。(シート回転の動画はこちら)
ベッド

ベッドキットオプション「D:BED」
ベッドキットはオプションで用意されている。「D:BED」と「D:BEDⅡ」の2種類があり、「D:BED」は3列目シートを利用する。ベッドサイズは記されていないが、デリカD:5の荷室幅は中央部で1300mm、後部で1170mmなので、ほぼ家庭用のセミダブルの幅(1200mm)に相当する。

ベッドキットオプション「D:BEDⅡ」
また「D:BEDⅡ」は3列目シートを跳ね上げて最後部まで延長できるベッドで、足元ま連なる。「D:BEDⅡ」では上の写真のように跳ね上げられた3列目シートがベッド幅を狭くしているので足元が窮屈になりそうだ。
また「D:BED」では3列目シートをリクライニングすると足を伸ばしてリラックスできそうだ。更に「D:BED」の方が安価なので、こちらの方がお勧めと思われる。

セミダブル幅のルーフベッド
ルーフベッドは1800x1160mmの大さ。1160mmは家庭用ではやはりセミダブルベッドの幅に近い。ここでも大人が2名就寝できる。
ギャレー
デリカD:5 D POPにギャレーの想定は無く、オプションとしても用意されていない。
冷蔵庫/電子レンジ

10.5Lポータブル冷蔵庫がオプションで用意されている
冷蔵庫は12Vで動作する10.5Lポータブル冷蔵庫がオプションで用意されているが、特に専用の設置スペースが用意されているわけではないので、好みのポータブル冷蔵庫を別途購入することもできる。
なお、電子レンジの想定は無いが、このモデルの用途を考えると、必要性は低いだろう。
多目的ルーム
デリカD:5 D POPにはもちろん多目的ルームは無いが、緊急用にポータブルトイレを積んでおくことはできる。小さな子供がいる場合は、特に便利だ。
収納

大きな積載スペース
収納はデリカD:5にある既存の小物入れの他は、特に用意されていない。積載スペースとしては3列目シートを跳ね上げてできる大きなスペースがあるので、キャンプ用品などはここに積み込める。
空調

FFヒーター(OP)の吹き出し口
暖房はFFヒーターがオプションで用意されている。自動車メーカーや販売店が製作するキャンピング仕様車では自動車の燃料タンクの加工が必要なため、FFヒーターを想定していない場合もあるが、デリカD:5
D POPではしっかり用意されている。
車中泊をする場合、FFヒーターはほぼ必需装備なので、この設定は嬉しい。なお、FFヒーターを動作させるには電源が必要なため、サブバッテリー(OP)も装備する必要がある。
確かにコストはかかるが、FFヒーターを装備せずにアイドリングで暖を取ることは、マナー的にも環境面でもやるべきではない。また雪が積もるような状況では命に係わる可能性もある。

車載用セパレートクーラーがオプションで設置できる
特筆されるのは車載用セパレートクーラーがオプションで設置できること。クーラーはそれなりに電力を消費するので、リチウムイオンバッテリーも選択できる。夏の車内の暑さに真剣に取り組んだ素晴らしいアプローチだ。
リチウムイオンバッテリーも含めると高価な装備になるが、夏でもフルに活用できるので、キャンピングカーとしての使用期間が長くなる。

リアゲートに組み込まれたベンチレーター
なお、展示車には小型のベンチレーターが装備されていた。サブバッテリーで動作するのでオプションと思われるが、オプションリストには記載されていない。これはリアゲートに組み込まれているもので、リアゲートの下部から排気される。
テレビ/ナビ

フリップダウンモニター
展示車には上の写真のようなフリップダウンモニターが装備されていたが、これもオプションリストにはない。しかしアマゾンなどでも汎用品が多数販売されている。これらを取り付けてもらうことも可能だろう。
電装系
標準では電装系は装備されていない。主にファーストカーとして日常使用し、車中泊をしないなら電源が無くても問題ないが、車中泊をする場合、照明やテレビ、あるいはスマートフォンの充電など電気を使うケースは多々ある。
この場合はサブバッテリーが必要になる。基本的な電装システムとして105Ahのディープサイクルバッテリーと走行充電がオプションで用意されている。FFヒーターや冷蔵庫なら、これでもとりあえず問題ないが、ツインサブバッテリーにしておくとより安心だ。
さらに、オプションのクーラーを装備する場合は、200Ahのリチウムイオンバッテリーの搭載が紐づけられている。外気温や他の機器の使用状況にもよるが、6時間程度の運転ができるだろう。
また外部100V電源入力と充電機能はともにオプション。サブバッテリーで100Vの家電品を使用する場合は1500W正弦波インバーターもオプションで装備できる。ソーラーシステムはポップアップルーフに張り付けるため、薄型の176Wのものがオプション設定されている。
価格(2023年1月現在:千円台切り上げ:税込)
デリカD:5 D POPは最低グレードのMで492万円~、最高グレードのPで539万円~となっている。デリカD:5のPグレードは448万円~なのでポップアップルーフの架装は約91万円ということになる。
ただし、車中泊をするにはベッドキット(132,000円:D:BED)、電装系(212,500円:ディープサイクルバッテリー1個)、外部電源入力と充電機能(88,000円)、1500W正弦波インバーター(121,000円)、FFヒーター(275,000円)、できればクーラー(330,000円)が必要となる。
他モデル
デリカD:5をベース車にするキャンピングカー仕様車(車中泊車)は、デリカD:5 D POPの他には、ケイワークスのD:5クルーズ(646万円~:Pグレード)がある。こちらはポップアップルーフはオプションとなっており、価格は1,023,000円。即ち、ポップアップルーフを架装したPグレードは749万円~となる。
D:5 D POPと比べると210万円も高価だが、D:5クルーズには2列目にマルチモードシート(REVOシート)、100Ahリチウムイオンバッテリー1個、CTEK走行充電システム、外部100V電源入力と充電機能、1500W正弦波インバーターなどが標準装備になっている。
デリカD:5 D POPにこれらの装備を加えると、620万円(Pグレード)程度になる。これでもまだケイワークスのD:5クルーズの方が120万円も高価だ。
ただしD:5クルーズにはマルチモードシートが採用されており、D:5 D POPのベッドキットに比べると高級感があり、またダイネットやベッドへの展開も楽だ。更に、D:5
D POPでは運転席、助手席の回転機構を装着しないと対座ダイネットはできない。
このように比べてみると、高級志向ならD:5クルーズ、簡易的なベッドで良ければD:5 D POPということになる。ただし、D:5 D POPにはクーラーが装備できるという大きなアドバンテージがある。
まとめ
D:5 D POPは日常使うファーストカーとレジャー用途の車中泊車の要素を1台にまとめたモデルだ。キャンピングカー用にもう1台分の駐車場を持てないような場合、あるいは商用車ベースのキャンピングカーはちょっとというユーザーに最適なモデルだ。
もちろん専用のキャンピングカーに比べれば室内スペースは比べるべくもないが、クルマ旅などを考えなければ、十分有用だ。例えば金曜の夜に出かけ、車中泊をして次の日は朝から遊び、夕方は速めに帰途につけば渋滞を避けて帰宅できる。休日の時間の使い方も大きく変えることができる。
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