ボーターバンクスはナッツRVが製作する、トヨタのマイクロバス、コースターをベース車にしたセミフルコン。
ボーダーは同社のフラグシップであるとともに、国産キャンピングカーの最高峰のひとつでもある。現在セミフルコンを製作しているビルダーは、ACSオアシスSHを製作するRVビックフットとシリウスを製作するフィールドライフ、そしてナッツRVの3社のみ。
その中でもナッツRVはType-D、Type-L、Type-Tの3つのレイアウトをラインアップし、充実したラインアップを誇る。更に2021年からはリチウムイオンバッテリーを採用したハイパーエボリューション仕様も追加。従来のエボリューション仕様も継続される。
なお、この記事ではType-Dを取り上げている。Type-LとType-Tについては、それぞれの記事を参考いただきたい。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
国産キャンピングカーの最高峰の名に相応しいモデルで、全てにおいて高いレベルで仕上がってる。ここで取り上げたType-Dは対座ダイネットと後部の常設ダブルベッドのレイアウトで、二人旅にもファミリーにも対応できる。
また、Hyper Evolution(ハイパーエボリューション)システムの追加により、バッテリーでエアコンを長時間駆動することも可能になった。
エクステリア
ボーダーバンクスType-Dのエクステリア
ベース車はトヨタコースター ビッグバン ハイルーフ 標準ボディ。これをボディカットし、シェルを架装している。シェルは断熱性に優れる同社オリジナルの高断熱コンポジットパネルを使用。サイドとリアはアルミコンポジットパネル、床とルーフはFRPコンポジットパネルとなっている。
エントランスドアにはスライド式の網戸が組み込まれており、全ての窓はアクリル2重窓が採用されている。コンポジットパネル構造と相まって、極めて高い断熱性を実現している。
インテリア
後方のレイアウトとインテリア
高い洗練度と品質のインテリアで、各パーツも世界の一流品が使用されている。家具のカラーは4色から選択できる。上の写真は「アンティークウッド」。
レイアウト
前方のレイアウトとインテリア
前部に対座ダイネット、後部に常設ハイマウントダブルベッドの組み合わせ。ダイネットの横にギャレー、中央に多目的ルームとクローゼットが配置されている。
このレイアウトは後部のベッドが横置きで、前部に浸食する長さが1400mmと少ないため、ダイネットや多目的ルームに余裕がある。ちなみにType-Tでは縦置きツインベッドのため車長方向に1800mm取られており、Type-Dに比べて多目的ルームやダイネットが狭くなっている。
ダイネット
ボーダーバンクスType-Dの対座ダイネット
ダイネットは2列目の後ろ向き固定2人掛けシートと、3列目の前向き固定2人掛けシートの対座スタイル。2列目シートの横にはサブシートも用意されている。
先述の通り、Type-Dは横置きダブルベッドのためダイネットは広く、車長方向に1900mmが与えられており、足元も比較的余裕がある。
簡単にベッド展開できるダイネットベッド
ダイネットはシートバックで中央を埋めるだけで、簡単にベッド展開することができ、1900x940mmのベッドになる。幅は940mmなので家庭用ではシングルベッドの幅に相当する。また身長方向は1900mmあるので、身長の高いユーザーでも窮屈感は無い。
ベッド
後部のハイマウントダブルベッド
後部のハイマウントダブルベッドは、大きさが2020x1400mmで車幅方向に就寝できる。ツインベッドのType-Tに比べプライベート感は劣るが、スペース効率は優れている。1400mmの幅は、家庭用ではレギュラーダブルベッドに相当する。
後部ベッドにはウッドスプリングが採用されている
後部のハイマウントダブルベッドにはウッドスプリングが採用されており、質の高い睡眠が期待できる。
バンクベッドはクイーンベッドの幅に近い
ダイネットの上にはバンクベッドが設置されている。大きさは2020x1580mmで、ここが最も広く、1580mmは家庭用ではクイーンベッドの幅に近い。
二人使用でバンクベッドを使用しない場合は、ここは大きな収納スペースとして活用できる。手前部分を跳ね上げ扉にすることができるので、走行中に荷物が落ちてくる心配はない。
ギャレー
広いギャレーセクション
ボーダーバンクスのギャレーは広く、収納も豊富で、理想的なギャレーだ。まず天板は極めて広く、跳ね上げ式調理台もあるので、更に広い調理スペースとなる。上面には2口コンロとシンクがビルトインされており、手の込んだ料理も可能だ。
収納は引き出し収納が豊富に用意されており、カトラリー用の引き出しも用意されている。また下には鍋などの調理用具を収納する大き目の収納もある。
冷蔵庫/電子レンジ
110L横開き式冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は110L横開き式が標準装備されており、エントランスを挟んで後部の家具にビルトインされる。もちろん冷凍室もあるので、冷蔵と冷凍が同時にできる。これだけの容量があればファミリー用の食材をストックしておくことができる。
電子レンジも標準装備され、ギャレーコンソールの下に収納されている。なお、冷蔵庫はギャレーからはもちろん、車外からも取り出しやすい位置に置かれている。
多目的ルーム
多目的ルームにはトイレやシャワーを設置できる(OP)
ボーダーの多目的ルームは標準ではトイレやシャワーは装備されておらず、がらんとした個室があるのみだ。これはユーザーの用途に柔軟に対応できるようにしているため。トイレやシャワーが不要と言うユーザーも少なくなく、無駄な設備にならないようにしている。
熱交換式のボイラー
もちろん必要であればオプションでカセットトイレ(あるいはポータブルトイレ)や温水シャワーを装備することができる。専用の手洗いも用意され、防水処理や排水溝も装備されている。またFFヒーターの吹き出し口もあり、暖かいトイレだけでなく、乾燥室としても使える。
湯はボイラーで沸かすが、これはラジエーターの熱で加熱するもので、走行中に湯が沸く。容量は22Lで70℃の湯になるので、これを水と混合して適温にする。外部電源がある場合は電気で加熱することもできる。
水と混合して使うので、水の温度にもよるが、冬場では2人程度の湯量しか得られない場合もある。ダイレクトカーズのトリップやアネックスのリバティ52DB/52SPでは瞬間湯沸かし機能が搭載されている。最高峰のボーダーバンクスにも欲しいところだ。
収納
ベッドルームのオーバーヘッド収納
ボーダーバンクスでは収納も充実している。まずオーバーヘッド収納は、ダイネットの上、ギャレーの上、それとベッドルーム両側に設置されており、いずれも奥行きがあり大きな収納力がある。
クローゼット下の引き出し収納
ギャレーの収納は先述の通りだが、その他にも小さな引き出し収納が用意されている。
クローゼットは2か所用意されている
クローゼットは2か所用意されており、一つは高さがあり長いコートも吊るしておくことができる。冬場の旅では衣類がかさばるが、これだけのクローゼットがあれば余裕で収納できる。
ハイマウントベッド下の大きな外部収納
そしてハイマウントベッドの下は大きな外部収納になっており、キャンプ用具などを車外3方面から収納することができる。もちろん車内からのアクセスも可能だ。
空調
家庭用エアコンが標準装備される
暖房はFFヒーターが標準装備される。吹き出し口は多目的ルームを含め4か所あるので、室内をムラなく温めることができる。また冷房は家庭用エアコンが標準装備される。
エアコンの運転は、ハイパーエボリューションシステムやエボリューションシステムでは、オルタネーターの出力のみで制限なく連続運転できるとしており、即ちエンジンがかかっていれば、バッテリーの電気を持ち出すことなくエアコンを運転できる。
なおハイパーエボリューションシステムでは、100Ahのリチウムイオンバッテリーを4個標準装備しているので、単純計算だが、日中でも8~9時間程度は連続運転できると思われる。なおエボリューションシステムでは100Ahのディープサイクルバッテリーを4個標準装備しているが、効率の面を考えると、5~6時間連続運転できると考えられる。
テレビ/ナビ
19型のテレビが標準装備される。また追加のテレビがオプション設定されている。ナビはオプション設定されているが、持ち込みも対応している。
電装系
リチウムイオンバッテリー(OP)を搭載した電装系
2021年に発表されたハイパーエボリューションシステムでは、リチウムイオンバッテリーが採用された。エボリューションシステムの特徴を継承し、リチウムイオンバッテリーに対応している。
ダブルタイヤやコンポジットパネルなど、先進技術をいち早く取り入れる同社にしてはリチウムイオンバッテリーには遅い対応で多くの顧客が待ちわびていた。
ハイパーエボリューションシステムの特長は100Ah x4個(=400Ah)の大容量リチウムイオンバッテリーを約4時間の走行で満充電できることの他、80%充電モードが用意されていることだろう。
80%といっても320Ahもあり、これだけの容量があれば、エアコンや電子レンジを電気を気にせず使うことができる。通常は80%モードだけで使えばバッテリーを長持ちさせることができる。
価格(2021年8月現在:千円台切り上げ:税込)
ディーゼルターボ6ATでハイパーエボリューションシステム搭載車は1578万円~、エボリューションシステム搭載車は1490万円~となっている。88万円の差があるが、ハイパーエボリューションシステムをお勧めする。電気に関する安心感が全く異なるし、ボーダーに乗るならここで節約すべきではない。
必需品のオプションはナビ関連くらい。その他必要に応じて、トイレや温水シャワー、あるいは200Wソーラーシステムが挙げられる。
他モデル
前述の通り、国産セミフルコンはボーダーバンクスの他に、RVビックフットのACSオアシスSHと、フィールドライフのシリウスがある。
シリウスは三菱ローザをベース車にしたモデルで6.7(全長6,705mm)と7.0(同6,970mm)があり、またそれぞれにレイアウトを3種類選択できる。家庭用エアコンは当然装備されるが、バッテリーはディープサイクルバッテリー3個で特に目新しいもにはない。
ACSオアシスSH(1,704万円~)はベース車がコースター(あるいはOEMの日野リエッセⅡ)ショートLXで、リチウムイオンバッテリーは160Ahを2個標準装備する。また最大825Wのソーラーシステムを搭載し、ソーラーシステムによる充電に重点を置いている。
セミフルコンの域を出るが、バンテックのV670(1540万円~)や、輸入モデルのデスレフのグローブバスGT I1(1298万円~)も比較対象になるかもしれない。
V670ははフィアットのデュカトをベース車にした美しいシルエットのキャブコンで、家庭用エアコン、カセットトイレ、温水シャワーが標準装備される。バンテックのモデルは全てそうだが、リチウムイオンバッテリーの選択肢は用意されていない。
輸入モデルではグローブバスGT I1が5990mmでボーダーバンクスよりも短い車長を持つ。輸入モデルらしく温水シャワーやカセットトイレは標準装備ながら、家庭用エアコンとリチウムイオンバッテリーはオプションとなる。
まとめ
ボーダーバンクスは国内最高峰のキャンピングカーで、それに相応しい完成度となっている。インテリアだけでなく、ハイパーエボリューションシステムなどの機能面から見ても、国産モデルのフラグシップと言える。
インテリアのセンスも、今や欧州車と同等以上と言ってよいほど洗練されたものになってきた。そうなると、国内のインフラに即した国産モデルは優位になる。
ただし、価格的には輸入車と同等か、輸入車の方が安価な場合もある。例えば先のグローブバスGTI1は1298万円~、フジカーズジャパンが輸入するモビレッタのK-YACHT TEKNOLINE89は全長7430mmとサイズ的には大きいが、価格は1518万円~だ。(いずれもエアコンとリチウムイオンバッテリーをオプションを追加すると160万円程度必要)
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