アサカゼとそのライバル比較(4/4)


キッチン
アサカゼのみコンロが埋込み型ではなく、卓上式カセットコンロを置く方式をとっている。
ガスコンロは、ジル520クルーズ、ボーダーバンクスが2口、グローブバスGT I1は3口を持つ。
やはり、このクラスのモーターホームなら、少なくともコンロは複数バーナーで埋込み式が欲しい。
使わないというユーザーが多いという理由もあるかもしれないが、全体としての高級感、グレード感が失われる。

一方、ギャレーコンソール自体は、グローブバスGT I1が最も狭く、コンロとシンク以外に調理スペースが無い。
この点では、ボーダーバンクスとアサカゼが広い調理スペースを持つ。
ボーダーバンクスのキッチンは実に豪華だ。

冷蔵庫は、国産3車が90リッターに対し、グローブバスGT I1は160リッターと、極端に大きい。
これは、日本のようにコンビニやスーパーがすぐに見つかる環境ではない欧州の事情があるため。
ファミリー分の食材を冷蔵しておく場合でも、90リッターで問題ないだろう。
ただし、キャンプ場などに長期滞在する場合は、冷蔵庫は大きい方が便利ではある。

 ジル520クルーズの90L冷蔵庫

また、電子レンジが標準装備されるのはアサカゼだけ。
電子レンジをバッテリーで使うには大容量のインバーターやバッテリーの強化が必要になる。
この点から言えば、既にバッテリーの増強と大容量インバーターが標準装備のジル520クルーズは電子レンジだけ購入すればよいが、ボーダーバンクスやグローブバスGT I1は電装系を設置しなければならないので、コストは高くなる。
いずれにしても、車格的には必需品なので、これらをまとめて標準装備にした方がユーザーには分かりやすいだろう。

サニタリールーム
日本ではトイレはコンビニや観光地ですぐに見つけられるし、温泉や銭湯もちょっと探せばすぐに見つかるので、トイレやシャワーは必需品ではない。
そのような背景から、アサカゼやボーダーバンクスにはスペース(個室)は用意してあるが、カセットトイレや温水シャワー設備はオプションになっている。
ボーダーはオプションで手洗いシンクも付くが、全体的に無機質な感じ。

一方、グローブバスGT I1は豪華なサニタリールームが標準装備されている。
もちろん温水設備も標準装備される。
特筆されるのはジル520クルーズのサニタリールームで、欧州車に負けないオシャレな個室を標準装備する。

ビルダーの考え方が別れるところだが、車格から言えば、スペースは確保されているのだから、やはり美しいサニタリールームがあるとクルマ全体が洗練された印象になる。

収納
どのモデルもオーバーヘッド収納が豊富に用意されており、また、キッチン周りの小物収納も充実している。
特にボーダーバンクスの細分化された引き出し収納は、食器を分類して収納するのに便利。

大型収納スペースはどのモデルも後部ベッド下に用意されている。
ジル520クルーズのみ2段ベッドなので、この収納スペースの大きさでは不利。

自転車をそのまま積み込むなら、グローブバスGT I1が圧倒的に有利だ。
欧州車ではこの部分は”ガレージ”と呼ばれ、最低限でも自転車を積むことは想定されている。
そのためコンパクトなキャブコンでも、比較的縦に広いスペースを用意している。
ただし、国産車のようにリアハッチがないので、後ろからアクセスできない。

 グローブバスGT I6の外部収納


空調
暖房に関しては各社FFヒーターが標準装備されているのは、車格から言うと当然だろう。
冷房は、エアコンが標準装備されるのはアサカゼとジル520クルーズ。
特にアサカゼは24V仕様のビーカム専用機iCOOLが標準装備される。
これは車載を前提にした設計なので、車載時の耐久性に優れるとされる。

ボーダーバンクスとグローブバスGT I1は家庭用エアコンがオプション設定される。
この2モデルではルーフエアコンと家庭用エアコンの選択ができるので、あえてオプションにしているのかもしれないが、効率の良い家庭用エアコンを標準装備して欲しいところだ。
なお、グローブバスGT I1のエアコンはイーコンフォートという、国産家庭用エアコンをベースに開発された車載用エアコンが用意されている。

電装系
電装系をウリにしているのはアサカゼ。
標準で360Ahの24V系サブバッテリーを搭載し、最初から万全の電気系対策を行っている。
S・E・P(Special Electrical Package)と名付けられた電装系は、専用設計のウルトラキャパシターにより、iCOOLを含めてバッテリーマネージメントを行う。
ジル520クルーズも、標準で100Ahを4本搭載しているので、容量的には心配ない。

 アサカゼのバッテリーシステム

グローブバスGT I1で目を引くのは、リチウムイオンバッテリーをオプションで選択できること。
200Ahと400Ahを選択できるが、200Ahでもかなり余裕のある電気消費ができる。

一方電装系が心配なのはボーダーバンクス。
標準では115Ahのサブバッテリーが2個装備されるが、追加バッテリーの記載はない。
また、インバーターは400Wと1500Wがオプション設定され、標準装備はされない。
即ち、標準では車内で100Vは使用できない。
インバーターがオプションなのはグローブバスGT I1も同じ。
やはりこの車格なら1500Wインバーターが標準で欲しいところだ。

発電機は国産3車はホンダ16iをオプション設定している。
アサカゼは専用引き出し式収納スペースが用意されており、ジル520クルーズはホンダの純正消音ボックスをオプション設定している。
発電機は、消音対策も考慮されていないと実用にならないので、消音化のソリューションは必須だ。

価格
アサカゼは上記の表では1266万円と最も高価で、温水シャワーやトイレを設置すると100万円弱追加費用がかかる。

ジル520クルーズは、1070万円とこの中では最も安価で、温水シャワー付きサニタリールームや家庭用エアコンも標準装備され、サブバッテリーも標準で4本と、大きなオプションを付ける必要がない。
しかも4WDでかなりお得なパッケージングといえるだろう。

ボーダーバンクスは1123万円とそれほど安価ではない割に、標準装備が少ない。
温水シャワー、カセットトイレ、サニタリールームセット、家庭用エアコン、インバーターなどは全てオプションだ。
しかし、各オプションの価格設定はそれほど高価ではないので、上記全部入れても100万円以下に収まる。

グローブバスGT I2は、サニタリー設備が全て揃った状態で1140万円なので、大きなオプションといえば家庭用エアコンになる。
ただ、オプション設定が高価で、家庭用エアコン(イーコンフォート)だけで50万円、バッテリーとインバーターで30万円、リチウムバッテリーにすると、全部で最低でも100万円ほどになる。


まとめ
どの点に重点を置くかによって変わってくるので、どのモデルが良いと言うことはできないが、まとめると以下のようになるだろう。

まず、バランス良くまとまって、価格的にもお得感が大きいのがジル520クルーズ。
サニタリールームを含め、欧州車に対抗できるセンスの良さが光る。
温水シャワーやエアコンなど大きな設備が標準装備されているのも、お買い得感を高めている。

次にグローブバスGT I1。
欧州車のセンスの良いインテリアが一番のメリットで、エアコンを除くほとんどの大物設備が標準装備されている。
リチウムバッテリーとエアコンを付ければ完成度が高い。
右ハンドルは標準だが、右エントランスであることには注意。

機能的には、2重構造シェルや強力な電装系を持つアサカゼにアドバンテージが有る。
また、620WのソーラーパネルやiCOOLが標準装備され、それなりにお得感もある。
グローブバスGT I1やジル520クルーズに差をつけられているのは、やはりインテリアのセンスを含めた高級感だろう。
サニタリールームやギャレーにそのあたりが特に現れている。

ボーダーバンクスは、何よりもマイクロバスがベースであることがアドバンテージと言える。
機能や装備に特に飛び抜けたものはなく、インテリアも重厚感があり高品質ではあるが、セミフルコンという国内最高峰のカテゴリーに相応しいセンスが欲しい感じがする。

以上比較してみたが、機能性を重視するならアサカゼ、インテリアに重点を置くならグローブバスGT I1やジル520クルーズ、乗り心地を重視するならボーダーバンクスというところだろうか。

2017.3.14