ハイルーフを架装した標準ボディハイエース/キャラバン比較(その2)


前回はFRPハイルーフを持つバンコン、特にハイエース・NV350キャラバンの標準ボディのハイルーフモデル全般を解説したが、今回は、次の代表的4モデルを比較してみよう。

・コンポーザー アネックス
・ACSエールーム RVビックフット
・ナローエース テッツRVセンター
・ロイヤルJ RVトラスト

コンポーザー アネックス
2016年ジャパンキャンピングカーショーで、発表された、NV350キャラバンをベース車にしたモデル。
ベース車に溶け込む自然な型のハイルーフが美しい。


現在では、オリジナルのコンポーザーに加え、コンポーザーwith Dogとコンポーザーwith Familyがラインアップされ、更にポップアップルーフバージョンも追加されている。

どのモデルも前部に対座ダイネットを置くスタイルだが、with Familyのみ2列目シートは前向き、後向き両用で、他は2列目シートは前向き専用である。

ハードルーフ仕様は、どのモデルもルーフベッドは無く、シートを展開したフロアベッドがメインベッドとなり、オリジナルとwith Familyのみ後部にベッドボードを渡して子供用ベッドとすることができる。


with Dogは以前にも紹介記事があるが、後部にペット用シャワールームがあるユニークな存在。
ほぼ二人で使用することが想定されているが、2列目シートは前向き乗車できることから、ミニバン的な日常用途にも使える。

折角のハイルーフながらルーフベッドが無いのが残念だが、ルーフベッドを確保するほどの高さではなく、ストレスの少ない室内を確保するのがコンセプトらしく、車高も2460mmとノミネート4車中最も低い。
美しいフォルムはその恩恵でもある。


ACSエールーム RVビックフット
ACSエールームも2016年ジャパンキャンピングカーショーでデビューしたモデル。
こちらはハイエースの標準ボディを使用している。

ハイルーフはかなり大きく、高く見えるので、ルーフベッドを装備しているように見えるが、そうではない。
ベッドは後部に、常設縦置きハイマウントダブルベッドを設置。
厚みのあるマットレスを置き、就寝に重点を置いたコンセプトになっている。


実は、このレイアウトはかなり希少価値で、他にあまり例がない。
理由は、縦置きにすると前部のスペースが厳しくなり、ダイネットが狭くなってしまうからだ。
エールームも、簡易的な腰掛けとギャレーに取り付けられた跳ね上げ式のテーブルで構成されるシンプルなダイネットに抑えられている。

そして、大きな特徴は、エアコンを標準装備していること。
室内機は、ハイルーフ前部に取り付けられ、室外機はギャレーコンソール内に収納される。
排気は、ボディ中腹に穴を開けているが、不自然さはない。




ACSエールームは同社お得意の”ソーラーパネルと大容量バッテリーでIH化”のコンセプトを踏襲しており、ハイルーフ上には310Wのソーラーパネルを設置し、190Ahのサブバッテリーを標準装備、コンロはIHを採用している。

乗車2名、就寝2名と、ふたり旅に割切ったからこそできたレイアウトと言える。


ナローエース テッツRVセンター
同社のモデルは極めてレイアウトの自由度が大きく、全てがワンオフと言ってよいキャンピングカー作りをコンセプトにしている。
ナローエースも同様で、写真のレイアウトは一つの提案で、これに限ったわけではない。

ナローエースの特徴は、ハイルーフにバンクがあること。
最近ではスマートなエクステリアを求め、バンクを持たないモデルが多くなった。
今回ノミネートしたモデルも、ナローエース以外はバンクを持たないハイルーフを架装している。



しかし、バンクがあるメリットは、ルーフベッドが広く取れ、常設ベッドではないものの、常設部が広く、ベッドセッティングが比較的容易なことである。

そして、もう一つの特徴は、エアコンを標準装備している点。
室内機は後部に設置され、室外機はハイルーフの後部にスペースが設けられている。
この設置方法は、現在同社のみ採用しているが、メリットは室内機と室外機が近く、ほぼ直結されているため運転効率が良いことである。
デメリットは、重心が高くなることと、室外機が目立つこと。

更にレイアウトが自由で、かつ室外機を車外に設置したので、発電機を置くことができるのが大きなポイントである。
エアコンが付いていても、バッテリーだけでの運転は所詮数時間で、外部電源が無いと実用性は低い。


しかし、発電機があると実用性は一気に高まる。
もちろん、発電機のノイズが問題ないところでないと使えないが、同社のスーパーエースと同じ手法で積めば、かなり騒音は抑えられるし、排気も問題ない。

ナローエースは、自由度と実用面でかなり優位性のあるモデルと言える。
全員前向き乗車のファミリーユースでも、ラウンジソファを持つふたり旅仕様でも、好みのレイアウトができるのが最大のメリットである。

ロイヤルJ RVトラスト
ノミネート4車の中では最も車高が高いモデルで、大きなハイルーフを架装している。
しかし、フロントウインドウから連続した曲線で立ち上がったルーフは、大きなルーフの割には違和感が少ない。


ルーフベッドが設置されるのも強み。
バンクレスでルーフベッドを持つというのが、このモデルの特徴である。

2列目にFASPシートを採用しているので、前向きにすればここに3名、更に後部の単座シート2脚に2名、フロントに3名で、計8名が前向き乗車できる。

また、就寝はルーフベッドとダイネットを展開したフロアベッドで、計4名が就寝可能。
天井高が高いので、家族で使用しても窮屈感が少ない。


後部右側にはギャレーが設置されるが、左側も含め、フリースペースとなっており、ダイネットとの間に仕切りを付けてユーティリティールームとすることも可能だろう。

標準ボディでは、スペースが限られるため個室を作ることが難しいが、このレイアウトなら、後部を個室にして、トイレルームとすることも可能と思われる。


まとめ

それぞれ一長一短、個性があって、どれが一番良いとは言えないが、ケースによって最適のモデルは異なる。

まず、使用人数だが、ファミリーで使うなら、エールームは不可である。
ファミリーでゆったり就寝できるモデルなら、やはりハイルーフで就寝できるナローエースかロイヤルJだろう。
ふたり旅なら、唯一常設ベッドを持つエールームのベッドは捨てがたい。
また、ナローエースやロイヤルJなら、ルーフベッドとフロアベッドに分かれて就寝することもできる。

エアコンが必須であれば、エールームかナローエースが選択肢に残る。
ただ、現実的に使うなら、外部100V入力が得られる環境が必要。
それができない場合、ナローエースなら発電機を積載することができる。(ビルダーに相談)

ベース車で選ぶなら、コンポーザーは唯一のNV350キャラバン使用車で、スマートなハイルーフは、ファーストカーとして使っても十分格好が良い。

価格面を見ると、ナローエースがかなり有利だが、オプションが多いのがひとつの理由ではある。
あれもこれもと付けると、価格はあまり変わらなくなる。
自分の使用目的や必要装備を良く考えて、キャンピングカー選びをして欲しい。

ハイルーフを架装した標準ボディハイエース/キャラバン比較(その1)

 

2016.1.8