FREE540(フリー540)はハイマーが製作する、フィアットデュカトをベースにした輸入バンコンキャンピングカー。
ハイマーは言わずと知れたドイツの名門ビルダーで、高級モーターホームやキャラバン(キャンピングトレーラー)を中心に生産している。バーストナー、デスレフ、ニースマン&ビショフといった日本でもおなじみのブランドはハイマーのグループ会社だ。
FREE(フリー)シリーズは2018年にドイツで発表されたが、日本で展示されるのは2021年のジャパンキャンピングカーショーが初めて。日本で言うバンコンは欧州ではキャンパーバンと呼ばれるカテゴリーだが、現在ハイマーのキャンパーバンはこのフリーとSydney(シドニー)の2種類で、どちらも輸入されている。
フリーにはメルセデスのスプリンターをベース車にするFREE Sシリーズも存在するが、これは国内に輸入されていない。
(記事中の価格は全て税込です)
コンセプト
FREE540は欧州のバンコンだが、全長が5.4mとほぼハイエーススーパーロングと同じ全長で、輸入モデルにしてはコンパクト。フィアットデュカトの魅力と充実した装備で、国産バンコンに無いグレード感を訴求する。
FREEラインアップには540の他にFREE600とFREE602も選択でき、これらは全長が5990mm。FREE540より580mm長いが、こちらも6mを切る。
エクステリア
FREE540のエクステリア
ベース車はデュカト2.3Lディーゼルターボエンジンが搭載される。なお本国では120hpが標準だが、輸入モデルは全車178hpの最上位エンジンが標準装備される。またシャシーも標準の3300Kgからアップグレードされた3500Kgのものが標準装備されている。
なお、ポップアップルーフはオプションで、ノーマルルーフモデルも選択できる。ポップアップルーフのテントは3面に窓があり、バグネットにもなるが、全開はできないようだ。
エントランスは右側で、左エントランスは選択できない。またハンドルは左が標準で右はオプションになる。ボディカラーは12色から選択できる。
冒頭でも述べた通り、全長はハイエーススーパーロングとほぼ同じで国内では比較的運転しやすい方ではある。しかし全幅は2080mmで一般の2x5mの駐車スペースに駐車する場合は注意が必要だ。
インテリア
欧州車らしい洗練されたインテリア
インテリアは欧州車らしく機能的で洗練されたもの。家具の作りなどはそれほど高級というわけではないが、全体的に洗練された統一感がある。
なお、家具色は1種類のみだが、シート地は5種類から選択できる。またオプションでレザーシート表皮の選択も可能。
レイアウト
FREE540のレイアウトは欧州車の定石通り、前部にダイネット、後部にベッドルーム、中央にギャレーとサニタリールームを配置する。中央に動線が通っており、前から後ろまでストレスなく移動できる。
ポップアップルーフを上げても天井高が高くなるわけではない
また天井高はダイネット部で1900mmあり、大人が立っても頭がつかえることは少ない。なお、ポップアップルーフを架装していても、天井高が高くなるわけではない。ルーフは固定されており、ポップアップルーフはあくまでベッドとして存在する。これは国産のポップアップルーフと全く異なる考え方だ。
乗車人数は2列目シートに2名座れるので計4名で、全員が前向きに乗車できる。また就寝人数は、後部ベッドに2名、ダイネット展開ベッドで1名、ポップアップルーフに2名で、計5名が就寝できる。乗車人数が4名なので、4名のファミリーにも対応できる。子供が小さければノーマルルーフでも良いかもしれない。
ダイネット
運転席と助手席が反転するダイネット
ダイネットは、これも欧州車の定石通り、運転席と助手席が反転して後ろ向きになり、ダイネットチェアとして機能する。2列目には前向き2人掛けシートが配置され、4名がテーブルを囲める。なお、テーブルは2層になっており、下層をスライドさせると拡張できる。
ベッド
後部の常設横置きダブルベッド
メインベッドは後部の常設横置きダブルベッドで、大きさは1960x1320mm(狭いところは1,220mm)。家庭用ならセミダブルとレギュラーダブルベッドの中間の幅に相当する。マットレスは厚く、寝心地は期待できる。
ダイネットを展開すると大人1名用のベッドになる
また、ダイネットを展開すると大人1名用のベッドになる。大きさは1820x1010mmで、家庭用ではシングルベッドとセミダブルの中間の幅に相当する。
ルーフベッドはオプション(写真:ハイマー)
3つ目のベッドはルーフベッド。これはポップアップルーフがオプションなので、ポップアップルーフを架装した場合のみ使用することができる。大きさは2000x1350mmで、やはり家庭用のセミダブルとレギュラーダブルベッドの中間の幅に相当する。
なお、ポップアップルーフ用の防寒シートやFFヒーターの吹き出し口は用意されていないようなので、冬場は多少寒いかもしれない。ただし、FFヒーターの吹き出し口は本国仕様にはオプション設定されているので、オーダーできるのかもしれない。
ギャレー
2口コンロが常設されたギャレー
ギャレーにはシンク一体型の2口コンロが常設されている。さすがに調理することを前提にした欧州車のギャレーだ。ただ、調理スペースはほとんど無いのが難点ではある。ギャレーには引き出し収納が用意されており、カトラリーや食器を収納しておける。
冷蔵庫/電子レンジ
両開きドアの70L冷蔵庫が標準装備される
冷蔵庫は70L横開き式冷蔵庫が標準装備される。この冷蔵庫はワンウェイ、即ち12V専用となっている。また、両開きドアが採用されており、左右どちらにも開くので車内からでも車外からでも中のものを取り出しやすい。
電子レンジは標準装備ではなく、オプションにも記載されていない。いずれにしても輸入後にディーラーで取り付けることになるのだが、どこかの場所を改造して収納すると思われる。なお1500Wインバーターもオプションなので、バッテリーで使用したい場合は忘れずに装備する必要がある。
サニタリールームルーム
温水シャワーとカセットトイレが装備されたサニタリールーム
欧州車はバンコンでも温水シャワーとカセットトイレが普通に装備されている。ただしこのサニタリールームはアドリアのツインのようにトイレルームからシャワールームに早変わりするといったギミックは無いので、シャワー時はトイレをカーテンで仕切る必要がある。
温水は11Lのボイラーで沸かす。ボイラーはガスと電気両様となっているが本国仕様では軽油を使用しオプション設定となっている。また給排水タンクはそれぞれ100Lのものが用意されており、ボイラーで沸かした湯と水を混合して適温にする。なお、瞬間湯沸かし器ではないので、11Lの湯が60度近くになるまでに20分程度を要すると思われる。
収納
ギャレーとベッドルームのオーバーヘッド収納
欧州モデルの収納はポップアップルーフを架装していても充実している。ポップアップルーフで天井高は高くならないが、固定されたルーフのおかげでポップアップルーフの有無にかかわりなくオーバーヘッド収納を取り付けることができる。
オーバーヘッド収納はダイネット上とギャレー上、それにベッドルームの左右上部に設置されており、どれも奥行きが深く大きな収納力がある。
また後部ベッドを支える両側の家具にも収納スペースが用意されているほか、ベッド中央下のフリースペースには大きな荷物を置いておける。またベッド中央部はマットレスも含め簡単に跳ね上げることができ、自転車等の大きな積載物を積むことができる。
空調
暖房はボイラー兼FFヒーターが、日本仕様には標準装備される。冷房は特にオプション設定されていない。輸入キャブコンでは、日本国内で家庭用エアコンを取り付けるケースが多くなったが、輸入バンコンではまだ多くない。
ただ、アドリアのTwin(ツイン)のように欧州バンコンであっても家庭用エアコンやリチウムイオンバッテリーのオプションを正式に用意しているモデルもあり、対応が求められる。
ベンチレーターは標準装備となっているが、おそらくポップアップルーフを架装すると取り付けはできないと思われる。また、シャワーやトイレの後に湿気やにおいがこもらないために、サニタリールームにベンチレーターが欲しいところだ。
テレビ/ナビ
テレビは特にオプション設定されていないが、オーダーで取り付けることはできるだろう。またナビも特にオプションでの指定は無く、好みのものを取り付けることができる。
電装系
標準では95Ahのディープサイクルサブバッテリーが1個標準装備される。またオプションでツインバッテリーにすることができる。比較的大きな電力を消費するのは冷蔵庫とヒーターくらいなので、適度に充電する機会があればツインバッテリーでも問題ないだろう。
なお1500W正弦波インバーターもオプションなので、これを装備しないとサブバッテリーで100Vの家電品を車内で使うことができない。高級モデルなのでインバーターくらいは標準装備して欲しいところだ。
価格(2021年5月現在:千円台切り上げ:税込)
ノーマルルーフ車で941万円~、ポップアップルーフ車で1001万円~。ただし同社のサイトでは現在「モデルイヤー切り替わりのため価格改定中」となっており、最新の価格は未発表。
付けておきたいオプションは、サブバッテリー追加(37,400円)、1500W正弦波インバーター(154,000円)が挙げられる。なお、参考までに、ポップアップルーフはオプションで(605,000円:上の価格には含まれている)、右ハンドル(352,000円)、ベース車のオートエアコン(66,000円:標準はマニュアル)など。
他モデル
輸入バンコンは、今回取り上げたのフリーの他、アドリアのツイン、サンライトのクリフ、サンリビングのVシリーズ、ローラーチームのリビングストン、ホビーのKシリーズ、そしてハイマーのシドニーが挙げられる。
このうち、6mを切るのはツイン600SPB、クリフ540/600/601、V60SP、リビングストン5/KJ/K2、K60FT、フリー540/600/602、シドニーだ。
さらに、5.5mを切るモデルは、クリフ540(5410mm:880万円~)、リビングストンK2(5410mm:758万円~)、リビングストンKJ(5410mm:758万円~)、シドニー(4960mm:952万円~)が挙げられる。
このうち、フリー540と同じレイアウトを持つものは、クリフ540、K2の2モデル。ただしどちらも4名乗車できるが就寝は2名(クリフは+子供1名)で、フリー540の乗車5名、就寝4名(オプションのポップアップルーフ架装時)には及ばない。即ちフリー540は4名就寝できる(4名のファミリーで就寝できる)最も小型の輸入バンコンと言える。
まとめ
上記のように、4名のファミリーで就寝できる5.5mより短い輸入バンコンという条件では、フリー540しか選択肢が無くなる。しかしもう少し条件を広げると、KJはシャワールームは無い(トイレルームはある)が大人4名が就寝できる。また、クリフ601(5990mm:924万円~)、リビングストンK5(5995mm:797万円~)、K60FT(5990mm:874万円~)は少し全長が長いが、他の条件は全てクリアする。
価格面から考えると、やはりハイマーのモデルは高価だ。二人就寝の場合で比較すると、フリー540はポップアップルーフが無くても880万円~なので、リビングストンK2(5410mm:758万円~)のほうがかなり安価だ。
まとめるとファミリーで使うならフリー540かリビングストンKJ。KJはシャワールームが無いが安価だ。また全長が6m近くなっても良いなら、クリフ601、リビングストンK5、K60FTも加わる。価格的にはリビングストンK5が最も安価だ。
二人旅なら前出のように、フリー540ノーマルルーフか、リビングストンK2の選択肢となる。なお、さらに小型化を求めるならハイマーのシドニー(4960mm:952万円~)もあるが、やはり高価だ。
関連記事