アサカゼは日本特殊ボディ(NTB)が製作販売するスタンダードキャブコン。
大きな特徴は、いすゞがキャンピングカー専用に提供しているシャシー、”ビーカム(Be-cam)”を使用していること。
従来よりBe-camベースでは、エートゥゼットがアルビオンとアラモを製作販売しているが、これ以外にBe-camを採用しているモデルは無かった。
NTBは今年2016年2月のジャパンキャンピングカーショーで、同社初のモデル”Sakura”を発表しているが、これもBe-camベース。
Asakazeは2番目のモデルとなるが、Sakuraが1.5トンのベース車に対し、Asakazeは2トンワイドボディを採用している。
Be-camについては何度も触れているが、いすゞエルフをベースに、キャンピングカー専用にチューニングされたシャシーで、今までトヨタカムロード一色だったスタンダードキャブコンシャシーに一石を投じた。
大きな特徴は、後輪がダブルタイヤで、重量があるキャンピングカーのタイヤバーストに備えていること。
また、スタビライザーやリアショックなど足回りもキャンピングカーに最適化されている。
Be-camの強化された足回りとダブルタイヤ
AsakazeはこのシャシーにNTB独自のシェルを架装している。
これは、Sakuraでも採用されている2重構造のFRP製で、夏は熱気を強制排出し、冬は空気層で断熱する構造となっている。
また、床も空気循環により、エンジンの熱で床が熱せられるのを防ぎ、冬はFFヒーターの温風を循環させて床暖房の機能を果たす。
Asakazeのシェルは、最も先進のシェルのひとつと言ってよいだろう。
レイアウトは現在1種類しかなく、前部に対座ダイネット、後部にハイマウントダブルベッド、中央にギャレーとユーティリティールームの標準的な構成。
Sakuraも現在ではレイアウトのバリエーションが追加されているので、Asakazeもすぐに追加されるだろう。
装備は、このクラスのキャブコンでは当たり前だが、温水シャワーや発電機などに至るまで、ほとんどの装備がオプションで用意されている。
また、エアコンはBe-cam専用のiCOOLが標準装備されている。
これは家庭用エアコンと同じような形をしたセパレートエアコンだが、車載用に開発されたエアコンで、信頼性も高い。
ギャレーは大きく、シンクも大きく深いので、鍋や皿も洗えるだろう。
ただ、コンロは卓上式カセットコンロを置くことになる。
このクラスのモデルにしては、少し貧弱に見える。
もちろん、オーダーの自由度は高いビルダーなので、好みに応じて対応してくれるだろう。
また、給排水タンクは各20リッターとなっているが、温水シャワー装置を付ける場合は給排水タンクとも大きな容量になるだろう。
電装系は、24V90Ahを4個標準搭載するが、オプションでリチウムイオンバッテリーも搭載可能。
また、580Wのソーラーパネルも標準装備する。
なお、シェルのルーフは最初からソーラーパネルの装備を考え、ソラーパネルが埋め込み式になっている。
そのため、下からパネルが見えることはなく、見栄えが良いうえ、通風や配置効率も考慮されているので、理想的な設置環境となっている。
発電機はオプションに設定されていないが、スペース的には十分余裕があるので、消音ボックスを含め対応可能と思われる。
重心の位置を低くするためこの位置に積載されたサブバッテリー
Asakazeはこのクラスでは、最も先進的なキャンピングカーだろう。
特に2重構造のシェルのコンセプトは、他に例を見ない。
装備的にも充実しており、特にこれ以上の装備は考えられないだろう。
唯一問題点を上げるとすれば、価格だ。
1200万円を超えるプライスレンジは、もはやセミフルコンにも手が届くレンジに達する。
スタンダードキャブコンでは向かうところ敵なしだが、マイクロバスベースのセミフルコンと比較すると、乗り心地で差を付けられる可能性は残る。
足回りをチューニングしているBe-camではあるが、もとより人間を乗せる前提のマイクロバスに分があると思われる。
もう一つのライバルは輸入車だろう。
特にフィアットデュカトをベース車にする欧州車は、外観のスマートさと内装の高級感で国産車をリードする。
最近はセカンドブランドも輸入されており、価格帯も下がっている。
多少使い勝手が悪いがスマートな輸入車か、多少武骨だが使い勝手が良い国産車か、迷うところではある。