A60SPはスロベニアのコーチビルダー、アドリアモービルの傘下のサンリビングが製作する輸入キャブコンバージョン。欧州ではこのようなバンクを持つモデルをAlcoven(アルコベン)と呼ぶ場合がある。
昨今では、スタイリングがスマートなことからSシリーズのようにバンクレススタイルのほうがキャブコンの主流になっているが、やはりファミリーで使用するならバンクベッドがある方がはるかに扱いやすい。
A60SPはバンクを持つAシリーズの中でも6mを切る全長で、国内でも比較的扱いやすい。ただ、車幅が2,330mmで、これは国産バスコンよりも広いため、駐車スペースがネックになる場合も多いだろう。
レイアウトは、前部にダイネット、後部にベッドルーム、中央にギャレーとサニタリールームを配置する。
ダイネットから後部を見たレイアウト
ダイネットは欧州車のセオリー通り、運転席、助手席が180度回転して後ろ向きシートになり、2列目シートとで対座ダイネットを形作る。人数が多いことも想定されており、収納式のエクストラチェアも用意されている。サンルーフが装備されており、明るいダイネットを実現している。
運転席、助手席が回転するダイネット
最後部のベッドルームにはダブルベッドが据え付けられており、サイズは2100x1300mm。これは家庭用ベッドのセミダブルとダブルベッドの中間の大きさで、2名が就寝するには十分大きいわけではない。
最後部のベッドルーム
一方、バンクベッドは2100x1500mmで、実はこちらの方が大きい。天井高による圧迫感が気にならなければ、バンクベッドのほうがゆったり就寝できる。(ほとんどの場合、バンクベッドは子供のスペースになるが。。)なお、柵はないので、就寝中の落下には注意する必要がある。
ギャレーは欧州車らしく3口バーナーを持つ本格的なもので、右側にシンクが一体になっている。このギャレーが優れているのは、コンロの手前が調理スペースになっていることで、食材を切ったりするのに大変便利だ。多くの欧州車は立派なギャレーを持つが、調理スペースが大きく取られているものは少ない。
3口コンロを持つギャレー
冷蔵庫は100リッターの1way(12V)が標準装備される。ファミリーの人数分の食材を保冷しておくにはこれくらいの容量が最低限必要だろう。
なお、電子レンジはオプション。
ギャレーコンソールには引き出し収納が用意されており、食器の収納に便利だ。
サニタリールームは、シャバラのスライドドアが特徴で、使わない場合はギャレー前のオープンスペースとして使い、トイレやシャワーを使用する場合は、オープンスペースをサニタリールームとして使えるようになっている。床を外すと排水溝が現れる。
TRUMA Combi 6が装備されており、これはFFヒーター兼ガスボイラーとして使用できる。
スライディングドアで仕切られたサニタリールーム
収納は、ダイネット上、ギャレー上、ベッドルーム上にオーバーヘッド収納が豊富に用意されている。また、後部ベッド下が大きな収納庫になっており、大きな荷物はここに収納できる。
空調は上記のようにFFヒーターが用意されているほか、オプションでACフロアーヒーティングも可能。さらにラゲジルームヒーティングも選択できる。
また、家庭用エアコンもオプションで装着可能だ。
電装系は105Ahのサブバッテリーが1個標準装備されるが、これだけでは心もとない。外部電源が取れない場所で停泊する場合が多いなら、少なくとも200Ah程度欲しいところだ。なお、インバーターやリチウムイオンバッテリーもオプションで用意されている。
また、ソーラーシステムもオプションで取り付けられる。インフラが整っていない日本では、少なくともバッテリーは強化しておくべきだろう。
A60SPはファミリーでコンパクトな輸入モデルを望むユーザーには、お勧めの1台だ。価格も800万円以下(税別)で、国産モデルと大きな差はない。
ただ、サブバッテリーの追加やエアコンを取り付けたりすると価格アップにつながるほか、プロパンガスの充填が必要など、輸入車独特の使いにくさもあることは知っておく必要がある。