シティスイートはイタリアのコーチビルダー、ウィンガムが製作するフィアットデュカトベースのキャブコン。
同社は、デュカトベースを中心に数種のモーターホームをラインアップしているが、比較的コンパクトなモデルが多く、シティスイートは同社では中級クラスになる。
また、シティスイートはシリーズはなく、単一モデルとなっている。
日本へは、フジカーズジャパンが輸入、販売している。
キャブ部とシェル部が自然につながっているので、一見バンコンに見えるが、シェル部は独自のグラスファイバーモノコックボディーを架装している。
この素材により、耐久性、断熱性、防音性を高めている。
フジカーズジャパンは、やはりデュカトを使用したスペインのエースキャラバンズのエース565シリーズを輸入販売しており、これには左エントランスが用意されているが、このシティスイートは残念ながら右エントランスとなっている。
インテリアは、ホワイトをベースにオレンジのシートと、イタリアンデザインの配色が明るい室内を演出している。
また、白樺の幹を思わせる家具は、今までにない新鮮な印象を与える。
レイアウトは”よくある”欧州モデルのそれで、前部にフロントシートを回転させて2列目シートと対座するダイネット、後部にハイマウントダブルベッドを配置する。
また、ダイネットの横にギャレー、中央左サイドにサニタリールームを配置している。
さて、シティスイートはファミリー仕様だ。
従来より、欧州車はキャブコンではふたり旅仕様が多く、ファミリー仕様はフルコン(フルインテグレーテッド)が常だったが、最近ではキャブコンやバンコンでもファミリー仕様が見られるようになった。
日本へ輸入されるシティスイートでは、ダイネットの上にプルダウンベッドが標準で装備されており、これをプルダウンすると、1800x1300mmのダブルベッドが出現する。
幅1300mmは家庭用のセミダブルとダブルの間で、2名でも比較的ゆったり就寝できる。
プルダウンベッドと言うと、何か簡易的なイメージを連想するが、このクラスの輸入モデルでは、しっかりしたベッドマットを採用しており、シティスイートでも低反発のベッドマットが与えられている。
なお、プルダウンベッドを下ろすと、ルーフには大きなサンルーフが現れるが、これはプルダウンベッドを収納すると隠れてしまう。
即ち、ベッドで就寝するときのみ夜空を見上げるムーンルーフということになる。
後部のダブルベッドは、1800×1250mmで、幅はこちらのほうが多少狭い。
こちらも寝心地の良い低反発ベッドマットを採用している。
ユニークなのは、このベッドが電動で昇降すること。
ベッドを上部に上げることにより、ベッド下の収納スペースの高さが高くなる。
これは自転車などの大きな積載物を積めるように考えられたものだが、ここにコストをかけるのはなかなかユニークな発想だ。
大きな荷物を積むなら良いが、そうでないなら一度も動かないまま終わってしまう可能性もある。
ギャレーはダイネットのすぐ横にあり、アクセスし易い。
コンロも2口バーナーを持つビルトイン式で、その横には丸型の深いシンクもビルトインされている。
難点はギャレーコンソール上はコンロとシンクで占められており、調理スペースが全く無いこと。
振り向くとダイネットテーブルがあるので、これを使わざるを得ない。
また、80リッターの3Way冷蔵庫がエントランスを挟んで後部にあるタワーに収納されている。
なお、電子レンジはオプション設定されていない。
トイレとシャワーは輸入車の常で、豪華なサニタリールームが用意されており、カセットトイレや温水シャワーが標準装備。
温水はFFヒーター兼温水ボイラーで沸かし、水と混合して適温にする。
空調は、暖房はFFヒーターが標準装備されるが、冷房はルーフエアコンがオプション設定される。
家庭用エアコンがオプション設定されていないので、バッテリーで運転する事はできず、外部100V電源がある場合のみ使用できる。
収納は、オーバーヘッド収納が、ダイネット上、ギャレー上、ベッドルームに設置されており、また、ギャレーコンソールには豊富な引き出し収納が用意されている。
大きな荷物は、先に触れたベッド下収納に全て収まるだろう。
電装系は、105Ahのサブバッテリーが1個標準装備されるが、オプションでもう1個追加可能。
インバーターは350W、700W、1500Wから選択できるので、使用家電品が多いなら1500Wを選択すると良いだろう。
シティスイートは豪華でセンスが良い欧州車の中でも、イタリアンテイストを持つモデル。
インテリアだけでなく、グラスファイバーモノコックボディーやプルダウンベッドなど、優れた機能性も備えている。
ただし、価格は925万円(税別)からと、比較的高価な位置づけになっている。
フジカーズジャパンが扱うローラーチームのリビングストン5プレステージはバンコンだが、ファミリー仕様で689万円(税別)から、またやはり同社が扱うエース565は、これも電動プルダウンベッドを標準装備し、家庭用エアコンもオプション設定されて685万円(税別)からの価格だ。
シティスイートは確かにワンランク上の豪華さとセンスはあるが、家庭用エアコンや電子レンジのオプション設定が無い点と、価格が気になるところではある。